2023年04月12日
  • SDGs推進企業紹介【連載】

「長野県SDGs推進企業」訪問(第4回/株式会社高見澤)

ここ数年、SDGsに関心を寄せ、取り組もうという企業が増えてきました。
国の取り組み推進もより加速してきています。
「長野県SDGs推進企業登録」は2019年4月26日に長野県により創設され、現在1,608の企業が登録しています。宮田村商工会会員企業も8社が登録をしています。

第4回目は「株式会社高見澤」です。

伊那工場事務所棟|右奥に見えるのが生コンプラント
工場風景|中央に見える設備は、昨年設置した橋形クレーン

取材には、伊那工場長の服部昌彦さんにご対応いただきました。

伊那工場長の服部昌彦さん

1 会社の歴史、概要などを教えて下さい

長野県下高井郡高丘村(現中野市)で昭和26(1951)年3月創業。現在の社長の祖父が創業者です。伝え聞いている話では、りんご農家さんのりんごを首都圏に持っていて販売する青果店からスタートしたそうです。そこには、わらしべ長者のようなストーリーがありました。りんごの季節以外はトラックが空くので、骨材(砂利・砂)を運んでいたそうですが、その後本格的に運送業を始めたそうです。骨材を生コン工場に運んでいたのですが、今後生コンの需要が高まるらしい、骨材(砂利・砂)の需要も高まるらしいということで、運送業に加えて生コン事業と骨材事業を始めました。その後、当時としてはまだ珍しかったコンクリート二次製品工場に骨材を納めるようになり、結局自社でもコンクリート二次製品事業を始めることとなり、昭和48(1973)年にここ宮田村で伊那工場を建設しました。いずれも高度成長期の出来事であり、感慨深いものがあります。

現在は、貨物自動車運送、一般廃棄物・産業廃棄物の処理処分、建造物の解体工事とその収集運搬事業、青果物の販売、肥料の販売、食品加工・販売、コーンコブの輸入販売、不動産売買・媒介及び管理、損害保険代理業務、ゴルフ練習場の経営、ミネラルウォーターの製造販売(クリクラ)、チーズ類の加工及び菓子類の製造販売と幅広く手がけています。

近代では特に、SS事業に力を入れ、モービル石油ブランドで長らくやってきましたが、令和4(2022)年、上燃株式会社を吸収合併し、SS事業としては店舗数で長野県内2位となりました。

2 「長野県SDGs推進企業」認定はいつですか

2021年10月に認定されました。CO2削減が叫ばれる前、およそ20年前から自社製品の耐久性を向上させる取り組みとして高炉スラグ微粉末を導入しています。コンクリートは、セメント、水、砂、砂利と混和材を練って作ります。セメントの4割を高炉スラグ微粉末で置換した製品を作りました。CO2の削減を狙って高炉スラグ微粉末を使用したしたわけではありませんでしたが、結果的にCO2の削減につながっていることに気がつきました。SDGsで盛り上がる前から取り組んだ経緯があったので、SDGsの考え方に合うものとなりました。私共は営利企業ですが、こういった環境問題にも取り組まないと企業としての存続が危ぶまれる時代になるのだろうと感じています。

3 SDGsに向けた経営方針は

弊社の経営理念である「顧客・社員・株主・地域社会に必要とされ、信頼され、貢献でき、存在感のある良い会社(グッドカンパニー)を目指す」を実践し、SDGs達成のため一貫性をもって事業と社会貢献へ取り組んでいきます。

4 重点的な取組みについてお伺いします

青色で平たい屋根の上にもうすぐソーラーパネルを設置します。

(1) 重点的な取組1

「エネルギー使用量の削減」
2030年に向けた指標:電気、重油等の原油換算エネルギー使用量を原単位で前年比1%削減

平成29(2017)年から、電力使用料の削減として工場や事務所は照明はすべてLEDに交換済みでした。それは、コスト削減の意味合いからでした。そういった取り組みは終えておりましたので、次の一手として、再生可能エネルギーの利用拡大を目途として、太陽光パネルの設置工事を2023年3月に着工予定です。工場の屋根に120kWhの完全自家消費太陽光発電設備を設置し、年間使用電力の1/3を再生可能エネルギーで賄う計画をしています。

(2) 重点的な取組2

「働きやすい職場環境の改善」
2030年に向けた指標:時間外労働20%削減、有休取得率50%以上

伊那工場において、まず時間外労働は、令和4年6月期で令和3年6月期比から6.1%削減しております。元々時間外労働の多い職場ではありませんでしたが、さらに削減し、ワークライフバランスのとれた良質な職場環境を実現したいと考えています。
有休取得率に関しては、令和4年6月期の段階で、45.2%です。社風としては、有給を取得しやすい雰囲気はありますが、管理・監督職は取得率がどうしても低い傾向にありますので、そのあたりは改善の余地があるかと思います。

(3) 重点的な取組3

「不良低減による廃棄物の削減」
2030年に向けた指標:廃棄量を原単位で20%削減

生産工程での不良品や端材が廃棄物になります。年間にすると結構なボリュームになり、処分費もかかるので、できるだけ減らすようにしていきたいと思っています。不良品は、不良要因分析などの管理手法を用いて削減に取り組んでいますが、まだ道半ばといったところです。

5 重点的な取り組み以外でこれという取り組みがあったら教えて下さい

従前より社員提案制度を活用し、各自より「安全性向上」「生産性向上」などに関する提案を受け付け、提案件数と提案内容により人事考課にプラス評価を付与しています。その職場で働く人だからこその気付きも多く、安全な職場・ムダのない職場づくりに貢献しています。
以前から5Sの取り組みをしてきましたが、2022年7月からあらためて工場全体で5Sや生産性向上の為の活動に取り組んでいます。日常の仕事をしながら改善活動をするのは大変ですが、改善が進んだ先にある効率的でストレスが少ない職場実現の為、みんな頑張ってくれています。
伊那工場には若手社員も多いのですが、皆素直で優秀な好青年で、私自身良い職場で働かせてもらっていると日々感謝しています。

6 ビジネス的なメリットを教えて下さい

弊社では20年程前より、寒冷地での耐久性向上を目的としてコンクリート製品の原材料であるセメントの40%を高炉スラグ微粉末(製品所の高炉から出る鉄鋼残渣を粉砕したもの)で置換した製品を製造してきました。その数年後に京都議定書(平成17年)の発効がされたことでCO2削減に注目が集まり、その生産過程で大量のCO2を排出するセメントの使用量を40%削減している弊社製品に業界から評価をいただくことになりました。
現在ではカーボンニュートラルに対する取り組みは、建設資材業界でも必須の物であり、当工場では令和5年2月より高炉スラグ微粉末での置換率を55%に拡大し、国が推奨する「低炭素型コンクリート二次製品」の要件を満たした製品としました。完全自家消費太陽光発電に関しては、電気料金の急激な上昇への対策の側面もあります。

ほかにも、私が7年前に工場長に着任して以降、「1.企業利益の最大化=社員所得の最大化 2.社員幸福度の工場=ストレスなくやりがいを持って働ける職場づくり」の実現のため、「1.5S活動 2.ムダ(7つのムダ)の撲滅」に取り組んできました。今期より更に取り組みを強化し、スタッフ全員でさまざまな施策を実行しており、効果も表れてきました。今後は更に、生産性を向上させ低炭素型コンクリート二次製品の需要取り込みに努め、カーボンニュートラルに向けた社会全体での取り組みに貢献したいと考えています。

<取材して印象に残ったこと>
社員所得の最大化、という言葉がとても響きました。なかなか明言しにくい部分かなとも思いますが、そこを企業利益とリンクさせた上で各種のお取り組みに尽力されている姿が印象に残りました。

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